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位置関係から、水中での相対的な動きがわかる。No.1〜3は第1ダウン・スウィープ局面、No.3〜5は第1アップ・スウィープ局面、No.5−8は第2ダウン・スウィープ局面、そしてNo.8−10は、アップ・スウィープ局面となる。No.1−10の映像から、指先の動きを追うと、「S字」のカーブを描いていることがわかる。また、写真2は、泳者に対して前方から撮影された固定水中ビデオカメラの映像をもとに、左手プルの連続動作を示す。No.1−4は第1ダウン・スウィープ局面、No.4〜7は第1アップ。スウィープ局面、No7〜10は第2ダウン・スウィープ局面、そしてNo.10−12は、第2アップ・スウィープ局面となる。写真1および2の側方と前方からの映像を合わせてプル動作を観察すると、立体的に腕の動きがイメージできる。特に写真2からは、No.1とNo.10でみられる肩の柔軟性、No.7とNo.8の第1アップ・スウィープから第2ダウン・スウィープヘの移動時での肘関節角度、そして第2アップ・スウィープ局面であるNo.10〜12での手のひらの使い方に注目したい。
写真3,4,5および6は、プル動作を4局面別に籍集したものである。これらの映像は、移動カメラで撮影された。第1ダウン・スウィープ局面の目的は、水のキャッチにあるといってよい。写真3からも、入水後、肘関節と手首関節のわずかな屈曲動作により、手がしっかりと水をとらえていることがわかる。第1アップ・スウィープ局面(写真4)と第2ダウン・スウィープ局面(写真5)では、手からは大きな推進力が発揮されることになる。写真4および5では、図6で解説した手の移動方向と手の面との迎え色と、そして発揮される推進力の関係を、糸井選手のプル動作で再度理解したい。写真4での第1アップ・スウィープ局面中、手は後方斜め上方にプル動作が行われるが、その方向と手の面との角度は垂直な関係ではなく、迎え角が保たれている。これによって、手から抗力だけでなく、揚力が発揮されていることがうかがえる。また、写真5の第2ダウン・スウィープ局面でも同様に、主に肘関節の伸展運動により、手は迎え角の保たれた状態で後方斜め下方にプル動作が行われる。写真4と5の一連の動作は、スクリューの動きに近い。つまり、肘関節を中心に、写真4ではスクリューの羽が下から上方に、写真5では上から下方に回転しているとイメージすれば、手から発揮される抗力と揚力の合力である推進力は、泳ぐ方向に向いていることが理解できる。そして写真6の第2アップ・スウィープ局面は、手首関節の底屈動作によって推進力が得られている。この推進力は、スムーズなリリースとリカバリー動作を導くために役立てられるものと考える。
6−2. 中尾美樹選手
写真7および8は、中尾選手の側方および前方から撮影されたビデオ映像を編集したものである。それぞれのNo.1〜No.3は第1ダウン・スウィープ局面、No.3〜No.5は第1アップ・スウィープ局面、No.5〜No.8は第2ダウン・スウィープ局面、そしてNo.8,No.10は第2アップ・スウィープ局面となる。No.3のキャッチ動作は、まるで水の壁に手をあてているようにみえる。また、No.10のリリース動作(写真8)は、親指側から真っ直ぐに指先まで伸ばされた状態で行われているのがよくわかる。
6−3. 中村真衣選手
写真9は、中村選手の右手プル動作を示す。No.4〜No.10は、推進力の発揮される第1アップ・スウィープ局面と第2ダウン・スウィープ局面であり、肩関節および肘関節の使い方に注目したい。

7. キックとプルのタイミング

一股的に背泳ぎは、2ストローク6ビートとなる。左右の手が一回ずつプル動作を行う間に、キックは6回行われることになる。中村選手の泳

 

 

 

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